適格機関投資家等特例業務については、制度発足当初から、その規制の過度の緩やかさを危惧・問題視する声がありました。そして、金融商品取引法施行から年月を経た平成二十年代の半ば以降は、実際に投資者保護上の問題が頻発し、悪質業者の跳梁跋扈も無視できない状況に至りました。
そのため金融庁は、金融審議会に設置した、「投資運用等に関するワーキング・グループ」の平成27年1月28日付報告書を踏まえ、
平成27年の金融商品取引法の改正を通じて、適格機関投資家等特例業務の制度改正を行うこととしました。
改正案は、平成27年3月24日に閣議決定され、同5月27日付で国会で成立。さらに、平成28年2月2日には、金融庁から「平成27年金融商品取引法改正等に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメントの結果等について」が公表され、政令・内閣府令の改正内容が確定するとともに、新制度が平成28年3月1日から施行されました。
改正後の現在の制度では
以前から定められている虚偽説明、損失補塡の禁止に加えて、適格機関投資家等特例業務届出者の義務に関し、以下のような規制が追加されています。
・顧客に対する誠実義務(金融商品取引法第36条第1項)
・名義貸しの禁止(同法第36条の3)
・広告等の規制(同法第37条)
・契約締結前の書面の交付(同法第37条の3)
・契約締結時等の書面の交付(同法第37条の4)
・断定的判断の提供の禁止(同法第38条第2号)
・内閣府令で定める行為の禁止(同法第38条第8号)
・適合性の原則等(同法第40条)
・分別管理が確保されていない場合の売買等の禁止(同法第40条の3)
・金銭の流用が行われている場合の募集等の禁止(同法第40条の3の2)
・忠実義務・善管注意義務(同法第42条)
・自己取引等の禁止(同法第42条の2)
・分別管理(同法第42条の4)
・運用報告書の交付(同法第42条の7)
・一定の法定帳簿の保存
また、適格機関投資家以外で、顧客とすることが許容される投資家の範囲に関しては、平成28年3月1日以降は、
以下の条件にあてはまらない投資家には、勧誘等(正確には、自己私募及び自己運用)ができなくなりました。
・適格機関投資家
・国
・日銀
・地方公共団体
・金融商品取引業者等
・上場会社
・資本金又は純資産5千万円以上の法人
・特別の法律により設立される法人
・外国法人
・TMK
・証券等口座開設後1年以上経過し、投資性資産を1億円以上保有する個人
・資産管理会社
・特例業務届出者の親会社等、子会社等、これらの役職員等
※その他実際はかなり詳細ですが、実務上主要なものを抜粋
ただし、一定の要件にあてはまるベンチャーキャピタルに関しては、相応の知識・経験を有する者が追加されます。とはいえ、いずれにせよ対象となる投資家が大幅に限定されたことから、個人向けにファンド業務を行っていた事業者に関しては、そのままの形では、事業を継続することが不可能になりました。
主として個人投資家を相手方として適格機関投資家等特例業務を実施してきた事業者の事業の継続のためには、適格機関投資家等特例業務でプロ向け業務に絞って展開、第二種金融商品取引業・投資運用業登録、
社債の自己私募、
合同会社又は外国合同会社の社員権の自己募集、
動産又は不動産の売買契約形態などの対応をとっている業者が多いようです。
金融商品取引業者や適格機関投資家等特例業務届出者への監督は年々強化されていることから、
適格機関投資家等特例業務の継続や金融商品取引業登録は、相応の体制の確保が求められます。
一方、登録・届出を要しないビジネスを行う場合には、極めて自由な反面、登録業者以上に勧誘制限を遵守すること及び透明性を確保することが必要です。これは、建前論ではなく、適格機関投資家等特例業務と異なり、財務局の監督下を離れることから、外部から見ると実態の不透明性が飛躍的に増すことにより、問題が起きると関係機関から悪質性が高いと見られやすいためです。
とくに、
合同会社の社員権に関しては、国民生活センターから一定の形態の場合には集団投資スキームとして金融商品取引法の規制対象になる可能性がある旨の見解が示されています。
また平成30年には証券取引等監視委員会による裁判所への禁止及び停止命令発出の申立て事例も発生しています。不特定多数に対する投資ヴィークルとしての組成は、極めて慎重に適法性を検討したうえで進める必要があります。
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