| 適格機関投資家等特例業務制度改正の施行日が平成28年3月1日に決まりました。 |
平成28年2月2日に、金融庁から平成27年金融商品取引法改正等に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメントの結果等についてが公表され、政令・内閣府令の改正内容が確定するとともに新制度の施行日が平成28年3月1日と決まりました。既報のように、
今回の金融商品取引法改正は適格機関投資家等特例業務に関する規制強化が中心です。
今回のパブリックコメントでは、事業者から金融庁に対して非常に多くのコメントが寄せられました(当事務所も複数の意見を提出しました)。それにより、新制度の詳細が明らかになっています。
http://www.fsa.go.jp/news/27/20160203-1.html
http://www.fsa.go.jp/news/27/syouken/20160203-2.html
http://www.fsa.go.jp/news/27/syouken/20160203-3.html
制度改正後は、適格機関投資家等特例業務において相手方とすることのできる投資家の範囲が大幅に限定されるとともに、事業者に対する行為規制が大幅に強化されます。新規の届出の際の必要書類も以下のように大幅に増え、年次の事業報告書も導入されました。今後は、金融商品取引業者並みの規制が課せられるといっても過言ではありません。
・適格機関投資家等特例業務に関する届出書
・誓約書
・届出者が法人の場合には、定款及び登記事項証明書
・届出者(法人の場合は役員)・重要な使用人の履歴書・住民票抄本
・届出者(法人の場合は役員)・重要な使用人が成年被後見人・被保佐人等に該当しない旨の官公署の証明書又はこれに代わる書面
・重要な使用人(法人の場合は役員を含む)が暴力団等に該当しない者であることを当該役員・重要な使用人が誓約する書面
・適格機関投資家が投資事業有限責任組合(LPS)である場合においては、LPS契約に基づき当該LPS契約の相手方のために運用を行う金銭その他の財産の総額及び当該LPSの借入金の額
・適格機関投資家の全てが投資事業有限責任組合である場合に提出する書面
・密接関係者及び知識経験を有する者からの出資金総額を証する書面
また、
今回の改正に伴い適格機関投資家等特例業務届出者に課せられる行為規制は、以下の通りです。第二種金融商品取引業者や投資運用業者に課せられている規制に匹敵する内容であり、これらを遵守するには十分な金融商品取引業に関する経験と知識が求められます。
・顧客に対する誠実義務(金融商品取引法第36条第1項)
・名義貸しの禁止(同法第36条の3)
・広告等の規制(同法第37条)
・契約締結前の書面の交付(同法第37条の3)
・契約締結時等の書面の交付(同法第37条の4)
・断定的判断の提供の禁止(同法第38条第2号)
・内閣府令で定める行為の禁止(同法第38条第8号)
・適合性の原則等(同法第40条)
・分別管理が確保されていない場合の売買等の禁止(同法第40条の3)
・金銭の流用が行われている場合の募集等の禁止(同法第40条の3の2)
・忠実義務・善管注意義務(同法第42条)
・自己取引等の禁止(同法第42条の2)
・分別管理(同法第42条の4)
・運用報告書の交付(同法第42条の7)
また、適格機関投資家等特例業務に関する公衆縦覧、説明書類(※説明書類に代えて、事業報告書の写しをもって公表することも可能)に関しても、公表の義務が生じています。
今回拡充された行為規制は、
「金融商品取引業者並み」を志向したものです。法定帳簿に関しては、プロ投資家からアマ投資家への転換の承諾をする場合の交付書面、個人であるアマ投資家からプロ投資家への転換の際の法令適用の特例事項についての交付書面、契約締結前交付書面、契約締結時交付書面、募集若しくは売出し又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等に係る取引記録、顧客勘定元帳、登録投資法人との資産運用委託契約や投資一任契約等の財産の運用その他の法律行為の内容を記載した書面、運用財産に係る運用報告書、運用明細書が保存義務が定められています。
適格機関投資家等特例業務に基づき運用業務まで行う場合の事務負担は、第二種金融商品取引業者のそれを超えると思われ、もはや「素人が届出だけで簡単に始められる」という制度ではありません。
事業者に求められる知識の面でも事務負担の面でも、今後、適格機関投資家等特例業務を行うには、金融商品取引業者又は登録金融機関での職務経験を有する方か、それに準ずるキャリアをお持ちの方でないと実務上運営するのが容易ではないように感じます。
適格機関投資家等特例業務の対象としていい顧客は、国、日銀、地方公共団体、金融商品取引業者等、上場会社、資本金又は純資産5千万円以上の法人、特別の法律により設立される法人、外国法人、TMK、証券等口座開設後1年以上経過し、投資性資産を1億円以上保有する個人、資産管理会社、特例業務届出者の親会社等、子会社等、これらの役職員等(実際はかなり詳細ですが、実務上主要なものを抜粋しました)とほぼ原案通りとなっています。
これらの制約は自己募集の実施時点で判定されます。また、実務上、パブリックコメントで注目されるのは、施行日前(28年2月以前)に勧誘を開始して契約を締結済みの顧客に関しては、払込が施行日以降になってもそれが払込義務の履行に留まる限り、新制度の投資家の要件を満たしていなくても適法との見解が示されたことです。
以上のように改正を見てきましたが、施行日において適格機関投資家等特例業務を行っている事業者は、
経過措置として、施行日前に勧誘を開始した出資者の資産に関する自己運用業務は、引き続きこれを運用継続することができます。つまりこの場合、新規の募集はできませんが、既存の運用資産の運用継続は行うことができるということです。
とはいえ、対象となる投資家が大幅に限定されたことから、いずれにせよ、
個人向けにファンド業務を行っていた事業者に関しては、そのままの形では、事業を継続することはもはや不可能です。主として個人投資家を相手方として適格機関投資家等特例業務を実施してきた事業者の事業の継続のためには、概ね以下の方向性があると考えられます。
【登録又は届出維持】
(1)
適格機関投資家等特例業務でプロ向け業務に絞って展開
(2)
第二種金融商品取引業登録又は
買収(余力があれば投資運用業も)
【登録・届出を要しないビジネスに転換】
(1)
社債の自己私募
(2)
合同会社又は外国合同会社の社員権の自己募集
(3)
動産又は不動産の売買契約形態に転換
各ビジネスモデルの詳細は、リンク先の解説をご確認ください。なお、一般論となりますが、金融商品取引業者や適格機関投資家等特例業務届出者への監督は年々強化されていることから、
適格機関投資家等特例業務の継続や金融商品取引業登録は、相応の体制の確保が求められます。
一方、登録・届出を要しないビジネスを行う場合には、極めて自由な反面、登録業者以上に勧誘制限を遵守すること及び透明性を確保することが必要です。これは、建前論ではなく、適格機関投資家等特例業務と異なり、財務局の監督下を離れることから、外部から見ると実態の不透明性が飛躍的に増すことにより、問題が起きると関係機関から悪質性が高いと見られやすいためです。
とくに、
合同会社の社員権に関しては、昨年に国民生活センターから一定の形態の場合には集団投資スキームとして金融商品取引法の規制対象になる可能性がある旨の見解が示されています。投資ヴィークルとしての組成は、慎重に検討したうえで進める必要があります。
当事務所では、金融商品取引業の専門家として、
お客様のそれぞれの状況を伺った上で、お客様にとって最適のソリューションを提案いたします。ご不明な点やご相談があれば、是非お気軽に相談ください。
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